メディ・カフェ@関西HP

第二回メディ・カフェ@関西無事終了

ご報告がおそくなりました

去る10月10日、第二回メディ・カフェ@関西「医療にどこまで求めますか?〜“救児”と医療紛争解決の現場から〜」無事に開催することができました。

前日より大阪入りされたロハス・メディカル論説委員で「救児の人々」著者である熊田梨恵さん、周産期医療崩壊をくい止める会の松村有子さんのお二人は、もともと関西のご出身ということで、ひさしぶりの大阪の空気や町並みの雰囲気を楽しんでいらっしゃるようでした。前夜の懇親会では、あろうことかゲストの熊田さんに料理を取り分けさせ、かつ「給仕(給餌?)の人っすねっ」などという失礼な私の物言いにも、大変うけて頂きました。関西人ってすばらしい!

さて、メディ・カフェ当日は、心配された天気も持ち直し、肥後橋Albinoのテラスは日差しが暑いくらい。Medicafe_006blog

スピーカーのお二人は、緊張したとおっしゃっていましたが、お二人のお話とも分かりやすく、参加者の皆さんにも大変好評でした。Medicafe_002brog

熊田さんからは、脳出血を起こして緊急搬送先を探していた東京都内の妊婦(36)が、七つの医療機関から受け入れを断られ、出産後に亡くなった都立墨東病院事件で問題になったNICU不足の取材をはじめ、そこでNICUの現実を知ったことが「救児の人々」執筆のきっかけになったことを話されました。

取材により、周産期医療の現場に携わる関係者は、医療の進歩によって、かつては救われなかったケースでも救命されたが、果たしてこれで良いのか?と悩み、重度の障害をもって生まれた赤ちゃんの家族も治療や介護に疲れている現実を知りました。

一方で、「NICU」という言葉さえ知らない、その実態にいたっては、知る機会もない一般の人との情報の非対称や認識のズレ、死生観や想像力の欠如が問題であると考えるが、答えをだすことも、現場やご家族の複雑な心境やとりまく現状を聞いたインタビューの内容をまとめることもできずに悩まれたそうです。

しかし、川口恭ロハス・メディア社代表のアドバイスもあって、「取材したものをそのまま出そう、まず知って、一緒に考えてもらえるようにしよう」と「救児の人々」を出版されたのでした。

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松村さんからは、県立大野病院事件で被告になった医師を支援するために作られた「周産期医療崩壊をくい止める会」に寄せられた佐藤章教授の、被告医師だけでなく、周産期医療そのものの危機を乗り越えるためには、被告医師の無罪が確定して終わりにしてはいけないのだという思いをお話してくださいました

どんなに手を尽くして、ミスもなくても、救えないこともある。でも、赤ちゃんや妊婦が亡くなった時の悲しみを一番知っているのは産科医。悔しいとおもっているのも産科医。それを逮捕され、裁かれることの理不尽。

世間の人々との溝をうめるために、周産期医療の崩壊をくい止めるためには、百万言を費やすよりも、行動を起こすことが大切だと、生まれて間もない赤ちゃんを育てながら大変な思いをされているご遺族の助けになることをしたいと始められたのが妊産婦死亡されたご家族を支える募金活動でした。

また、医療を受けた結果に納得がいかない患者や家族が、訴訟にたよらずに病院側と話ができる、医療ADRを普及させることにも尽力。松村さんも携わっておられ、実際にあった相談をもとにした例をあげて、医療ADRの内容を説明していただきました。

スピーカーからの話題提供終了後は、一旦ティーブレイク。

お茶やチョコレートケーキを頂きながら、参加者同士やスピーカーと雑談しながら交流、そのあと、全体で意見交流となりました。

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参加者は、医師や助産師などの医療関係者や特別支援学校の教師や主婦などさまざま。

「特別支援校でも、子供の障害が重度化し、子供やお母さんの悩みも多様化していると感じている。入所施設でも、入所者や介護者の高齢化が深刻だときいている」(教員)

「別の病院に収容できていれば助かったというような報道の仕方をされるが、医療者から見れば違う認識をしている。どんなに手を尽くしても、助からないこともあるし、命だけ助かっても重い障害が残ることもある。どんな場合でも絶対に助けるという方向で正しいのか」(医師)

「日本の医療は船のようなもの。定員を超えて客を乗せていて、いつ転覆するかわからないが、乗客はそれを知らない。個人のミクロの視点ではなく、映画『タイタニック』をみるような全体を見渡すマクロの視点をもたなければならない」(医師)

「子供に病気が見付かったあとは、親にとっては、何度も手術や治療を繰り返す一本道しかない。あとで振り返って、それが正しかったのかわからない。でも、治療する以外を選ぶことができたのだろうか?」(主婦)

「最先端医療の研究室にいるが、この治療法が実用化されても、『救児の人々』とおなじようなことがおきるのではないか。日本の医療制度は、実に絶妙なバランスの上に成立っているが、国民の多くがそれをしらないとおもう」(大学職員)・・・などなど、それぞれの立場からの意見も沢山いただきました。

答えの出せる話ではなく、今後も、この「医療にどこまで求めるのか」というテーマは、別の切り口でまた取り組み続けていきたいということでお開きとなりました。